いくつになっても「会話を楽しむ」ために。知っておきたい『聴こえ8030運動』をご存知ですか?
目次
はじめに ― 「8020運動」の“耳バージョン“です
「80歳になっても自分の歯を20本以上保とう」という8020(ハチマルニイマル)運動は、多くの方がご存じかと思います。実はいま、耳の分野でも同じような考え方が注目されています。それが「聴こえ8030(ハチマルサンマル)運動」です。一般社団法人日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会が推進する「80歳で30dB(デシベル)の聴力(または補聴器をした状態で30dBの聴力)を保とう」という目標を掲げた取り組みです。この記事では、「聴こえ8030運動」とはどんな考え方なのか、なぜ大切なのかをお伝えします。
「30dB(デシベル)」ってどのくらいの聞こえ?
dB(デシベル)は音圧レベル(音の強さ)を表す単位です。聴力検査では「どれくらい小さな音まで聞き取れるか(聴力レベル)」を dB HL(hearing level)で表します。dB HL は正常聴力を基準にした単位で、数字が小さいほど小さな音まで聞こえており、聴こえが良い状態を意味します。
| 聴力レベルの目安 | 聞こえの状態 |
| 25 dB未満 | 正常聴力(小さな声やささやき声も聞こえる) |
| 25 dB以上 ~ 40 dB未満 | 軽度難聴(小声や騒音下での会話が聞き取りにくい) |
| 40 dB以上 ~ 70 dB未満 | 中等度難聴(普通の大きさの会話が聞き取りにくい) |
| 70 dB以上 ~ 90 dB未満 | 高度難聴(非常に大きい声や補聴器がないと会話が聞き取りにくい。聞こえても言葉の聞き分けが難しいことがある) |
| 90 dB以上 | 重度難聴(補聴器でも聞き取りが難しいことが多く、人工内耳が検討される場合がある) |
※ WHO(世界保健機関)・日本聴覚医学会難聴対策委員会の難聴の分類を参考にしています。分類には学会・機関により多少の違いがあります。
つまり、30dB以内というのは、日常会話にほぼ不自由しないレベル(※実際の聞き取りやすさは語音明瞭度や周囲の騒音にも左右されます)。「80歳を迎えても、ふだんの会話を楽しめる耳を保ちましょう」というメッセージが込められています。
なぜ今「聴こえ8030運動」が大切なのか
加齢性難聴は“誰にでも“起こりえます
加齢性難聴は、加齢に伴って起こる難聴です。内耳の有毛細胞の減少や聴神経の働きが徐々に低下することで生じ、特に高い音から聞こえにくくなる特徴があります。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会によれば、65歳以上のおよそ3人に1人、75歳以上では約半数の方に何らかの聴力低下がみられるとされています。つまり加齢性難聴は特別なことではなく、長生きすれば誰にでも起こりうる身体の変化です。
「聞こえにくさ」は放っておくとさまざまな影響が
近年、難聴を放置することのリスクが世界的に注目されています。
①認知症のリスクが高まる
医学雑誌『The Lancet』に掲載された国際委員会の報告では、難聴は認知症の“予防可能な最大のリスク因子“とされました。認知症はさまざまな要因が関わるため、難聴だけで決まるものではありませんが、早めの対応が重要と考えられています。
②会話が減り、社会的な孤立につながる
聞こえにくくなると、人との会話がおっくうになり、外出や趣味の活動から遠ざかりやすくなります。
③転倒リスクの増加
難聴と転倒リスクの関連を示した研究報告がされています。また、難聴が進行すればするほど、転倒するリスクも高くなるとも言われています。これは、自分の周囲の環境を認識しにくくなることが要因の一つです。また、難聴になると、脳は音を聞き取ろうとして常に多くの力を使います。その結果、バランスや歩行を保つために使う脳の働きまで十分に回らなくなり、高齢者では転倒しやすくなることがあります。
💡 ポイント
「聴こえ8030運動」は、単に”聞こえが良い状態を保つ”だけでなく、認知機能・社会参加・生活全体の質(QOL)を守るための目標なのです。
「聴こえ8030運動」を実現するために ― 今日からできること
年に一度は「聴力チェック」
歯の定期健診と同じように、耳も定期的に聴力検査を受けることがとても大切です。加齢性難聴はゆっくり進むため、ご自分では気づきにくいのが特徴です。「まだ大丈夫」と思っていても、検査をしてみると思っている以上に聴力が下がっていた、というケースは珍しくありません。もし聴力検査の結果が30dBを超えていても、がっかりする必要はありません!「聴こえ8030運動」では、補聴器を適切に使うことで、聞こえを30dB相当まで補うことも目標に含まれています。大切なのは、脳に音の刺激を届け続け、聞こえる状態を維持していくことです。
聞こえにくくなったら「早めの対策」を
聴力の低下が見つかった場合、耳鼻咽喉科の医師の診断を受けたうえで、補聴器の活用を早めに検討することが推奨されています。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会では、補聴器の使用にあたって「補聴器相談医」への受診を勧めています。そして、医師の指示のもとで言語聴覚士・認定補聴器技能者が在籍する病院や専門店でフィッティング(調整)を受けることが、適切な補聴器活用の第一歩です。
補聴器は聞こえ方や生活環境に合わせて少しずつ調整し、使い慣れていくことが大切です。購入前の試聴や、購入後の定期的な点検・再調整まで含めて考えることが、満足につながります。
耳に負担をかけない生活習慣を意識する
・大きな音を長時間聞き続けない(イヤホン・ヘッドホンの音量に注意)
・騒音の多い場所では耳栓を活用する
・生活習慣病(糖尿病・高血圧・動脈硬化など)の管理をしっかり行う
内耳の血流が悪くなると、聴力低下が進みやすくなるといわれています。糖尿病や高血圧などの持病がある方は、その治療をきちんと続けることも「聞こえを守る」ことにつながります。
ご家族の方へ ― こんなサインに気づいたら
ご本人は聞こえにくさを自覚しにくいものです。ご家族が以下のようなサインに気づいたら、やさしく受診をすすめてあげてください。
・テレビの音量が以前より大きくなった
・聞き返しが増えた(「えっ?」「なに?」が多い)
・会話中にうなずくだけで、話がかみ合わないことがある
・電話の声が聞き取りにくそうにしている
・人の集まりや外食の場を避けるようになった
「聞こえにくいのは年のせいだから仕方ない」と諦めないでください。適切な対策をとることで、毎日の暮らしが大きく変わります。
まとめ
| 「聴こえ8030運動」のポイント | 内容 |
| 目標 | 80歳で30dBの聴力を保つ |
| なぜ大切? | 難聴は認知症・孤立・転倒のリスクにつながるため |
| 今日からできること | ①定期的な聴力チェック ②早めの補聴器活用 ③耳にやさしい生活習慣 |
| ご家族の役割 | 聞こえにくさのサインに気づき、受診をすすめる |
「8020運動」で歯を守るように、「聴こえ8030運」で耳を守る。これからの時代、聞こえのケアはますます大切になります。「最近ちょっと聞こえにくいかも」と感じたら、まずはお気軽にご相談ください。認定補聴器技能者が、あなたの“聞こえ“に寄り添います。
📖 参考情報
聴こえ8030運動
https://kikoe8030.jibika.or.jp/
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 「難聴について」
https://www.jibika.or.jp/owned/hwel/hearingloss/
同 「難聴と認知症の関係」
https://owned.jibika.or.jp/hearinglossanddementia
難聴対策委員会報告 「難聴(聴覚障害)の程度分類について」
https://audiology-japan.jp/wp/wp-content/uploads/2014/12/a1360e77a580a13ce7e259a406858656.pdf
Medical Note 「補聴器装着など聴覚的介入でハイリスクグループの認知機能低下抑制―研究代表者が講演」
https://medicalnote.jp/nj_articles/231109-001-AK
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